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良い投信は知名度や残高ではない!「ひふみ投信」編

ひふみ投信の人気が高まっています。残高は、ひふみ投信とひふみプラス合計で2220億円になってきています。

ひふみ投信を運用しているレオス・キャピタルワークスの藤野社長が2月のカンブリア宮殿に出演されてから特に反響が大きいと思います。残高が集まっているのは、藤野社長の投資理念と実際の運用パフォーマンス、そしてメディアに積極的に出ていらっしゃることが大きいのではないかと思います。


ひふみ投信は運用成績においても、ここ10年で日経平均の倍のパフォーマンスを出しています。藤野さんの考え方は素晴らしく、資産運用業界において多大な功績を残していらっしゃるのは確かです。

 

しかしながら、私はひふみ投信を扱う事は全く考えなていません。なぜなら、日本で販売されている投信の運用パフォーマンスランキングで過去10年間、5年間、3年間のどれを見ても、ひふみ投信はトップ20にも入っていないのです。つまり、株式投信に限って言いますと、ひふみ投信よりパフォーマンスの良い投信がいくつもあるので、弊社では扱わないのです。

【出所:モーニングスターHP、2017.5.31までの10年間の運用リターンランキング】

なぜ、ひふみ投信はトップ20に入れないのでしょうか?その理由は、中小型株への投資比率が小さいからです。それは、ひふみ投信の運用規模が大きくなりすぎたこととも関係しています。

 

運用成績トップ20の投信の中で、15本が日本の中小型株に投資するファンドです。しかも、17本が運用残高150億円未満です。

 

ひふみ投信全体で現在、運用残高は2200億円程になっていますが、運用規模が大きくなると中小型株への投資を増やせなくなります。なぜなら、中小型株の市場規模はそれほど大きくないからです。ちなみに、中小型株の市場であるJASDAQの時価総額合計は9兆円で、マザーズは4.5兆円、東証二部は9兆円、三つのマーケットを合計しても22兆円しかありません。

 

東証1部の時価総額合計585兆円に比べて、たった3.7%の比率しか占めていないのです。

そうなりますと、全体の収益を上げるために小さな会社を細細と買っていられません。ある程度時価総額の大きな銘柄にバーっと一気に投資せざるを得なくなります。

 

実際、ひふみ投信の直近の月次運用レポートを見てみますと、JASDAQ市場株の組み入れ比率は4.6%になっており、3年前の2014年5月の11.5%から大幅に下がっています。

直近は上位組み入れ株に、任天堂、日本電産など、時価総額が1兆円以上の大型株が入っています。大型株で小型株運用より高いパフォーマンスを上げることは至難の業です。このことは当然、藤野さんもわかっていらっしゃることだと思います。

 

今後、ひふみ投信の残高がさらに増えてくると、投資できる銘柄は時価総額がある程度大きな銘柄が中心になりますので、パフォーマンスは市場平均前後になるでしょう。そうすると、わざわざ高いコストを払って、ひふみ投信を買うより、日経平均のETFでも充分なのではないでしょうか?

 

例えば、ひふみ投信が時価総額100億円の小型株を5%買ったとしても、5億円にしかなりません。その5億円投資した小型株は、ひふみ投信全体の2200億円からすると、たった0.2%の比率にしかならないのです。

 

ジャスダックとマザーズの銘柄は1,000銘柄弱しかありません。その中でも投資に値する有望株はそんなにたくさんありません。そんな少ない市場の株を大きな資金で買いに行くと価格が一気に跳ね上がってしまいます。

 

従いまして、運用規模が大きくなりすぎると、大型株を買わざるを得なくなるのです。

そういった背景から、個人投資家で資産を効率よく増やしたいと考えている方は、運用残高が大きいファンド、そしてどんどん残高を増やしている大型ファンドは投資対象から外すべきだと私は考えます。

 

しかしながら、大手証券会社や銀行は小さな規模のファンドは扱えないのです。例えば、野村證券が全社的なキャンペーンを打って、あるファンドに力を入れたとします。1ヵ月であっという間に1,000億円は集まります。結局、会社の営業方針として、中小型株ファンド等小さなファンドはキャンペーン対象から外されます。

大手証券や銀行で営業マンが自分自身でパフォーマンスの良い投資信託を探して販売するということは滅多にないのです。

 

日本社会と同じで右向け右、左向け左なのです。営業マンは会社や支店長や営業責任者が推奨する銘柄をやらざるを得ないのです。実は、私が野村證券を辞めた理由の一つはそれでした。

 

今の相場で、本当に資産を増やしたいのであれば、日本の中小型株に特化したファンドに投資すべきだと私は考えます。

 

ポイントの一つは運用残高が少ないこと。具体的には残高200億円以下が良いでしょう。

 

過去5年間でパフォーマンスNo.1の「DIAM新興市場日本株ファンド」は、残高100億円で募集を打ち切りました。こういったファンドが本物だと私は思います。いつまでも資金を大量に集めているファンドはダメです。

 

運用残高が少なく、あまり目立たない投信の中に、キラリと光る投信があることをもっと知って頂きたいと思います。私は、そのようなファンドに光を当てていき、実際に投資家の方に儲けて頂きたいと思っています。

 

マスコミへの露出が高いファンドや大手証券が力を入れているファンドは疑ってかかった方が良いでしょう。知名度や残高ではなく、本質を見極めて投資判断をしていただければと思います。

 

モーニングスターのサイトにある過去10年間、5年間、3年間の運用パフォーマンスランキングはかなり参考になると思います。ぜひご活用ください。

http://www.morningstar.co.jp/FundData/FundRankingReturn.do

【出所:モーニングスターHP、2017.5.31までの5年間の運用リターンランキング】

【出所:モーニングスターHP、2017.5.31までの3年間の運用リターンランキング】